相続で仲間外れにされてしまったら?(まとめ記事)
はじめに
この記事では相続で仲間外れにされてしまったと感じた方や、仲間外れにされるかもしれないと不安に感じている方、実際仲間外れにされているといった方に有益な情報を提供することを目的に執筆したものです。
仲間外れについて
お亡くなりになった被相続人やその他の親族と折合いが悪かったり過去に大喧嘩をしたり、あるいはお亡くなりになった被相続人の介護を行わず疎遠だったり、このような事情から、標題のような事例の事実が起こることはきっと意外に多いと思います。
まず、はじめに仲間外れとはどんな状況かを考えてみましょう。
- 嫌われ者
- コミュニケーションを長らく取っていない
- 過去に大ゲンカで喧嘩別れした
- 介護を一切やらない
等、他の法定相続人と疎遠な状態にあることがほとんどです。
今更もめたくないし、そっとしておきたい
心情的にはコミュニケーションを取りたくない、悪化させたくないというお気持ちは理解できます。
しかし、法定相続人としての権利は全く別の話です。
今後の家族関係の悪化を避けたい場合やご自身が言いづらい場合には弁護士が矢面に立ち手続を進めることができます。
ご自身が直接ご親族とコミュニケーションを取る必要がありません。
さて、それでは、法律事項についてお話いたします。
遺言で仲間外れにされたら
まず、遺言で仲間はずれにされてしまった場合についてお話します。
仲間外れにされてしまった場合、つまり自分に全く財産を遺してもらえなかったとしても、自分が配偶者や子などの法定相続人であれば、最小限の取り分があります。
遺留分:法定相続人であれば、最小限の取り分
この最小限の取り分のことを、遺留分といいます。
標題のような事例の場合であっても、自分の遺留分については請求することができます。
遺留分の割合:サザエさんの家族で事例解説
遺留分の割合は、ケースバイケースですが、たとえばサザエさんの家族をモデルとしますと、波平が亡くなってカツオだけが遺言で仲間外れにされてしまった場合、カツオの遺留分は1/12(本来の相続分は1/6)となります。
つまり、たとえ、波平が「フネには~サザエには~、ワカメには~。」という遺言を遺して磯野カツオには何も遺してくれなかった場合であっても、磯野カツオには1/12は取得できるのです。
遺留分の手続
では、カツオは、いかなる手続で遺留分に相当する遺産を回収するのか、その回収方法について説明します。
カツオは、遺留分減殺請求権という権利を行使することによって、遺留分の回収を図っていくことになります。
遺留分減殺請求権という権利を行使
上記の例ですと、カツオが、フネ、サザエ、ワカメらに対して、遺留分減殺請求権を行使し、1/12に相当する遺産を請求することになります。
もっとも、遺産の総額をいくらに評価するのかによって、カツオの最終的な回収額が変わってきます。
遺産総額の評価
つまり、1/12の遺留分といっても、遺産が1億2000万円相当ならカツオの遺留分は1000万円になりますし、遺産が1200万円相当ならカツオの遺留分は100万円になります。
現実にはここまで遺産の評価について幅のある事例はありませんが、それでも例えば不動産や株式が遺産に含まれている場合、その財産的評価をいかにするかについて、遺留分額に影響しますので、しばしば当事者間で熾烈に争われます。
このように、遺言で仲間外れにされてしまっても、遺留分がありますので、ご留意ください。
遺留分減殺請求権の落とし穴
また、遺留分減殺請求権は、1年という短い期間で時効消滅しますので、くれぐれもご注意ください。遺言で自分が仲間外れにされていることが分かったら、すぐに弁護士に相談してください。
遺産分割協議書で仲間外れにされたら
次に、遺言のない場合で、自分の関与なくその他の相続人で勝手に遺産分割が行われているケースについてお話します。
遺言がない場合
まず、大前提として、遺言がない場合、法定相続人間で遺産分割協議を行って誰が何の財産を相続するか決めることになります。
遺産分割協議
この遺産分割協議は、法定相続人全員で行う必要があります。つまり、ご自身の関与なく他の相続人が勝手に遺産分割協議を行っても、その協議結果には法的効力がなく無効です。
そのため、ご自身の法定相続分に基づく遺産の取得を主張することができます。
しかし、現実問題としては、他の相続人が事実上遺産を独占していてこちらの主張を無視する場合もあるでしょう。その場合は、法的手続によって、遺産内容の開示、引渡を訴求していくことになります。