2016

02.

04

Thu

犯罪の成立について⑥(構成要件該当性・客観面・因果関係)

今回は、構成要件の客観面の中の、因果関係についてお話します。因果関係は、要するに、実行行為によって犯罪結果が生じたといえる関係のことです。これについて、AがBに対してピストルを撃ってBが死亡したという例でご説明します。
まず、前提として、「あれなければこれなし」の関係、すなわち、AがBに対してピストルを撃つというAの実行行為がなければ、Bの死亡結果が生じなかったという関係が必要です。この「あれなければこれなし」の関係を条件関係といいます。
次に、条件関係を前提として、その実行行為によってその結果が生じることが社会通念上相当であることが必要です。例えば、Aの撃ったピストルの弾がBの眉間に命中してBが死亡したという場合、Aの実行行為によってBの死亡結果が生じたことは明らかに社会通念上相当です。他方、Aの撃ったピストルの弾が命中しなかったが、これに驚いたBが逃走して迷子になり、途中初めて寄った料理屋で運悪く食中毒になって死亡したという場合、確かにAのピストルを撃つという実行行為がなければBの死亡という結果は生じず、条件関係は認められますが、Aのピストルを撃つという実行行為からBの食中毒という結果が生じることは、通常考えられないため、社会通念上相当とはいえず、因果関係は認められません。このように実行行為と結果があるものその間の因果関係がないという場合、未遂が成立する場合を除き、犯罪は成立しません。ちなみに、殺人罪の場合は未遂を処罰することとされているので、上記の例のAには殺人未遂罪が成立します。
このように、因果関係は、偶然によって結果を犯罪の成否の検討から除去することで、処罰の適正化を図っているといえます。