2017

03.

01

Wed

少年事件の流れ

ご存知ですか?

少年が犯罪を犯した場合、すなわち、少年事件手続は、どのように進んでいくのか、今回はその流れをご説明します。

事例

ある男性少年が電車で女性に対して痴漢をし、女性が警察に通報した場合、痴漢行為は迷惑行為防止条例違反という名前の犯罪行為となりますが、その男性少年の手続はどのように進んでいくのでしょうか。

解説

前回まで、刑事手続の基本的な流れを概説させていただきました。
刑事手続は、原則として、成人の場合を予定しています。今回は、犯罪者少年であった場合、いかに手続が進むのかをお話したいと思います。

 まず、刑事手続が被疑者被告人の罪を明らかにして刑罰を与えるためのものであるのに対し、少年事件は、その少年の将来の非行化の防止を趣旨とします。この両者の手続の趣旨の違いから、自ずと手続自体にも違いが生じてきます。

 もっとも、少年が逮捕されてから以後の捜査段階においては、成人の場合の刑事手続と全く変わるところはありません。少年事件における少年審判も裁判手続である以上、裁判のために対象者の逃亡を防ぐべく対象者の身柄を確保して、証拠を収集するという捜査の目的に変わるところはないからです。もっとも、捜査の終結時における検察官の終局処分に違いがあります。この場合、検察官は、必ず、刑事手続の場合と異なり、事件を家庭裁判所に送致しなければなりません(少年法42条)。刑事手続の場合、検察官の裁量で、不起訴として実質お咎めなしの処遇がなされる場合もあります。しかし、少年が犯人の場合、そのような検察官の裁量は存在せず、すべて家庭裁判所に送致され、以後、少年事件として処理されることとなります。
 次に、家庭裁判所に送致されると、少年の身柄は、通常、観護措置という手続によって、鑑別所に収容されます。鑑別所の主要な目的は、少年の非行性の原因と対策の探求です。そこでは、家庭裁判所の調査官をはじめとする教育面での専門家が、様々な科学的手法を用いて、少年の非行化の原因と対策を探ります。こうして、少年の非行化の原因と対策を探り出した上で、少年審判を迎え、裁判官が少年の最終的な処遇を決します。また、弁護士は、付添人という立場で、少年と面会して内省を促し、少年の社会復帰後の環境調整を行います。
 さて、少年審判の結果は、実務上、大きく分けて、少年院送致と、保護観察に分かれます。少年院送致は、少年を少年院という矯正施設へ収容する手続です。この手続は、決して刑罰ではなく、少年の社会復帰後の非行防止の観点から健全な道を歩ませるために教育を施すことを目的としています。他方、保護観察は、少年の身柄を拘束せずに社会で生活を送りながら少年の暮らしぶりを見守る手続で、成人の刑事手続の場合と執行猶予とよく似ており、保護観察期間中に何もなければ晴れて非行についてはお咎めなく手続が終了します。さらには、検察官送致(いわゆる逆送)といって、いったん少年事件として処理したものの、やはり非行の重大性等を理由として成人と同じく刑事手続として処理する決定があり、この場合、成人と同じく刑事手続上の公判によって処理されます。

以上、少年事件について概説させていただきましたが、少年事件の場合、実務上、何よも少年の再非行防止のための環境調整が重要視されます。