刑事と民事の違いについて
前回は、憲法の範囲内で、様々な法規が存在し、国民を規律していることをお話しました。今回は、この法規が、大きく、民事法と刑事法に分かれていることをお話します。
まず、刑事法律関係は、簡単に言えば、上に位置する国家とその下に位置する国民との間の「縦」の法律関係です。国家が、国民に対し、刑法に代表される刑罰法規を通じて、「殺人を犯してはならない。もし犯したら刑罰を科す。」と国民の行動を制限しています。
次に、民事法律関係は、上に位置する国家は関係なく、下に位置する国民相互間の「横」の法律関係です。例えば、売買契約の売主が買主に対して「売買代金を払え。」と主張したり、お金を貸した貸主が借主に対して「貸した金を返せ」と主張したり場合がまさにこれに当たります。この民事法律関係は、前述の例で、買主が売買代金を払わないことやお金の借主がお金を返さないことが犯罪として刑事法律関係の問題となるかどうかとは、基本的には無関係です。もちろん、刑事・民事の両面が問題となる場合もあります。たとえば、交通事故の加害者は、刑事の面で自動車運転過失致傷罪という犯罪で処罰されますし、民事の面で被害者に損害賠償をしなければなりません。しかし、このように刑事・民事双方の法律関係が問題となるのは、あくまでもたまたまで、基本的には、刑事・民事のそれぞれの法律関係は互いに無関係といえます。
次回は、刑事・民事問わず、実体法と手続法の関係についてお話したいと思います。