犯罪の成立について⑦(構成要件該当性・主観面・故意)
さて、実行行為、結果、その間の因果関係が認められる場合、構成要件の客観面は充足することとなります。しかし、構成要件においては、さらに主観面で構成要件を充足することが必要です。すなわち、上記の客観面(実行行為、結果、その間の因果関係)を認識・認容していることが必要なのです。この実行行為、結果、その間の因果関係)を認識・認容していることを故意といいます。
故意について、AがBに対してピストルを撃ってBが死亡したという殺人罪の場合を例にして説明します。Aが撃ったピストルは本物だったのにAはそれをおもちゃのピストルと勘違いしていたという場合、Aは「人に対してピストルを撃つ」という実行行為を認識していないので、故意はありません。また、Bは当然人であるのにAはBを人形だと思っていた場合、やはりAは「人に対してピストルを撃つ」という実行行為を認識していないので、故意はありません。
また、故意は認識に加えて認容が必要ですので、Aが「Bが死亡してしまうかもしれないがそれは困る」という心理状態にあれば、認容までは認められないので、故意はなく殺人罪は成立しません。ただし、この事例では、過失致死罪が成立します。