2020

04.

14

Tue

他人に新型コロナウィルスをうつしてしまったら犯罪になるか

先日、新型コロナウィルスに感染し、保健所から隔離を要請されたにもかかわらず、「ウィルスを拡散してやる」と言って繁華街に繰り出した人物がいました。

全く非常識な振舞いですが、彼のような振舞いに犯罪が成立するかどうかについて、検討してみましょう。

まず、考えるのは、傷害罪です。傷害罪は、「人の身体を傷害」することです。「傷害」とは生理的機能を害することと定義されており、暴行によって負傷させたことのほか、病気をうつすなどの結果も広く含まれます。

そのため、他人に新型コロナウィルスをうつした場合、傷害罪が成立します。

不幸にも被害者が新型コロナウィルスに感染した結果死亡してしまった場合、傷害致死罪や殺人罪も成立します。

しかし、新型コロナウィルスをうつそうとする傷害行為(キスをする、目の前で咳をする等)と、被害者の感染との間に因果関係がなければなりません。つまり、被害者の感染が犯人の傷害行為によって生じたということが必要です。客観的には真に傷害行為によって感染が生じた場合であっても、裁判で検察官がそれを立証することはまず不可能といわざるを得ません。

以上から、客観的に傷害罪は成立し得るものの、立件することはまず不可能だといえます。

ただし、たとえば、無人島で2人しかいない環境下で新型コロナウィルスをうつそうとして傷害行為を行った場合などは、ほかに可能性がない以上、立件が可能となるでしょう。

また、本当に新型コロナウィルスに感染しているかどうか関係なく、「自分は新型コロナウィルスに感染している。」などと述べつつ人の業務を妨害する行為には、業務妨害罪が成立します。先日、空港で飛行機に乗ろうとするときに上記のような発言をして同罪で逮捕された人がいましたね。とにかく、このような混乱した状況下にあって、大変デリカシーに欠ける行為といえるでしょう。

今は、自分と他人を守るという1人1人のモラルが本当に試されていると思います。今一度認識を強くして、危機を乗り越えましょう。